めったに会えない赤いパン。ビーツとカンパーニュの話

「情熱の赤」——今年も焼くことができました。

手に入れた時にしか焼けない、真っ赤なビーツ。その赤を見ていると、じわっと元気が湧いてくるんです。今日はそのパンのこと、それからカンパーニュという不思議なパンの世界のことをお話しさせてください。

ビーツって、どんな野菜?

ビーツはロシアのボルシチでおなじみの、真っ赤な根菜です。見た目はカブに似ていますが、甘みと独特の土っぽい香りがあって、切ると断面が濃い赤紫色をしています。

ロシアでは昔から「飲む輸血」と呼ばれてきたほど、栄養が豊富な野菜です。

ビーツの主な栄養と効果

  • ベタシアニン(あの赤い色素):強い抗酸化作用があり、細胞の老化や病気から体を守ってくれます
  • 一酸化窒素(NO):体内で産生され、血管を広げて血流を改善します。この発見は1998年にノーベル生理学・医学賞を受賞
  • カリウム:レタスの2倍以上。むくみ解消・血圧を整える
  • ラフィノース(天然オリゴ糖):腸内の善玉菌を育て、腸内環境を整える
  • 葉酸・鉄分:貧血予防に

見た目の鮮やかさだけでなく、身体の中から元気にしてくれる野菜です。

カンパーニュって何?

「カンパーニュ」はフランス語で「田舎」という意味。正式には「パン・ド・カンパーニュ(pain de campagne)」、つまり「田舎のパン」です。

パリの人たちが故郷を思い出しながら食べていた素朴なパン、それがカンパーニュの始まりと言われています。精製度の低い小麦粉や全粒粉、ライ麦を混ぜて、天然酵母でゆっくり発酵させて焼く。パリッとした皮、気泡がたっぷり入ったやわらかい内側——そのどこか懐かしい味わいが、今も世界中で愛されています。

フルーツカンパーニュとは?

カンパーニュにドライフルーツやナッツ、ジャムなどを練り込んだもの。プレーンのカンパーニュが「田舎の素朴さ」なら、フルーツカンパーニュは「田舎の贅沢」とでも言いましょうか。

素朴な生地の酸味と、フルーツの甘みや香りが重なって、食事にもそのままでも合う、リッチな味わいになります。えぷりーずでは、季節のフルーツジャムとドライフルーツを合わせて、そのときだけの一本を焼いています。

世界の変わったカンパーニュ、どんなものがある?

カンパーニュは「田舎パン」という大きな枠の中で、世界中でいろんなアレンジが生まれています。

  • 🔴 ビーツカンパーニュ(赤):ビーツの色素が生地に溶け込み、焼き上がると鮮やかな赤紫色に。見た目のインパクトだけでなく、栄養も抜群。
  • 🟢 抹茶カンパーニュ(緑):日本の職人が生み出したスタイル。抹茶の香りと苦みが生地の酸味と合う。
  • 竹炭カンパーニュ(黒):真っ黒な見た目がSNSで話題に。炭特有の風味はほぼなく、見た目のインパクト勝負。
  • 🟡 ターメリックカンパーニュ(黄):インド系スパイスを使った鮮やかな黄色。スパイスの香りが個性的。
  • 🟣 紫芋・紫キャベツカンパーニュ(紫):自然の色素で紫に。紫芋は甘みも加わる。
  • 🟤 いちじく&クルミカンパーニュ:世界中のパン屋で定番の組み合わせ。チーズとの相性が抜群。
  • 🫒 オリーブ入りカンパーニュ(地中海スタイル):南フランスやイタリアで定番。オリーブオイルと塩気が生地に溶け込む。

えぷりーずの「情熱の赤」について

5年以上前から、ビーツが手に入った時だけ焼いてきたパンです。

たっぷりのビーツに、その時々のフルーツジャムとドライフルーツを練り込んで。今回はビーツ・レーズン・柑橘ジャム入りで焼きました。

この赤を見ていると、なんだかすごく元気が出るんです。「情熱の赤」という言葉から、私が思い出すのはブルーハーツの『情熱の薔薇』。あの曲が昔から好きで——結局、すべては自分次第、見かた次第。今まで思っていたことが全部ちがっていたって、それなら面白がって先に進むしかない。そんな熱い気持ちを込めて焼きました。

ビーツが手に入らないと焼けないので、ひょっこり出てくる、めったに会えないパンです。贅沢な材料で作る、とってもリッチな一本——見かけたらぜひ。

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