グルテンの正体は?

「グルテンフリー」という言葉、最近よく聞きますよね。

でも「グルテンって何?」って聞かれたとき、ちゃんと答えられる人はどのくらいいるでしょう。

「なんか体に悪いやつ」「小麦に入っているもの」——なんとなくそんなイメージで、グルテンを遠ざけている方も多いように思います。

パン屋をしている私としては、ちょっと待って!と言いたくて。グルテンの正体を知ったうえで「フリーにしたい」なら全力で応援します。でも「なんとなく悪そう」だけで遠ざけるのは、もったいないな、と。

今日は、グルテンの事、お話しさせてください。

 

 

グルテンって、そもそも何?

グルテンとは、小麦粉に水を加えてこねることでできるタンパク質の網目構造のことです。

小麦粉の中には「グルテニン」と「グリアジン」という2つのタンパク質が入っています。これに水を加えてこねると、ゴムのような粘りと弾力を持つグルテンができあがります。

グルテニンはバネのように弾力があって、グリアジンは粘り気があってよく伸びる。この2つが組み合わさることで、生地は伸ばしても切れず、発酵ガスを逃さない袋みたいな役割を果たします。だからパンはふんわり膨らむし、うどんはもちもちなんですね。

グルテンは化学的に合成されたものでも、添加物でもありません。小麦と水をこねれば自然にできる、ごく普通のタンパク質です。

日本人は、ずっとグルテンと一緒に生きてきた

「グルテン=外来の危険なもの」みたいなイメージがあるかもしれないけれど、実は日本人はグルテンと長〜いお付き合いをしてきました。

麩(ふ)って知っていますか?

麩は、ほぼ純粋なグルテンでできています。小麦粉を水でこねて、でんぷんを洗い流すと残るのがグルテン——それが麩の正体です。

日本に麩が伝わったのは奈良〜鎌倉時代ごろ。禅僧たちが中国から持ち込んだもので、肉を食べられないお坊さんたちにとって、豆腐と並ぶ大切なタンパク源でした。生麩、焼き麩、お吸い物の麩……これ全部グルテンの食品なんです。

もちろんうどん、そうめん、ラーメンにもグルテンは入っています。醤油だって製造過程で小麦を使っています。

これだけ長い間、日本人はグルテンを含む食品を食べ続けてきました。そしてグルテンが原因の「セリアック病」の有病率は、欧米が約1%なのに対して、日本では約0.19%(島根県での疫学調査より)。とても低い水準です。

グルテンは、日本人の食文化に深く根ざした、なじみ深いものなんですよ。

じゃあ、なんで「グルテンが悪い」と言われるの?

グルテン過敏症やセリアック病の方にとって、グルテンは確かに避けなければならないものです。そういった方々にとっての食事制限は、医学的にとても重要なことです。

でも近年の「グルテンフリーブーム」は、そういう医療的な理由とは切り離されたところで広がっていますよね。著名人やアスリートのライフスタイルとして注目されて、「なんとなく体によさそう」「ダイエットになりそう」というイメージで実践する人が増えました。

農林水産省の資料によると、グルテンフリー食とダイエット効果の関係を実証する研究は現時点で限定的で、科学的根拠は十分ではないとのこと。むしろ健康な人が置き換えると、食物繊維やビタミンB群が不足するリスクを指摘する声もあります。

グルテンを悪者にするより前に、もっと大切な問いがあると私は思っています。

「どんなふうに作られたパンのグルテンを食べているか」です。

2時間発酵と16時間発酵——体が受け取るものが、まったく違う

ここが、えぷりーずとして一番お伝えしたいところです。

市販のパンの多くは、短時間で作られます。効率よく大量に作るための製法で、この場合グルテンは発酵中にほぼ分解されないまま残ります。できあがったパンのグルテンは構造が複雑なまま、消化器官に負担がかかりやすい状態です。

では、天然酵母で16時間以上かけてじっくり発酵させたパンでは、何が起きているのでしょう?

発酵の過程で、酵母や乳酸菌が「プロテアーゼ」という酵素を生み出します。このプロテアーゼがグルテンのタンパク質を少しずつ切り刻んで、小さな断片に分解していきます。発酵時間が長くなるほど、分解はどんどん進みます。

研究では、乳酸菌を使ったサワードウ系の長時間発酵パンで、グルテン濃度が最大97%減少したという報告もあるほどです。

さらに長時間発酵では「フィチン酸」という、鉄分や亜鉛などのミネラル吸収を妨げる物質も分解されます。つまり栄養もより吸収されやすくなるんです。

グルテンの「量」より、グルテンが「どんな状態か」が大事なんですね。

「2時間で作ったパンのグルテン」と「16時間かけて発酵させたパンのグルテン」は、名前は同じでも、体が受け取るものがまったく別ものです。

えぷりーずが時間をかける理由

えぷりーずは、京都宇治で自家製の玄米酵母を育てながらパンを作っています。

この玄米酵母に使っている玄米は、滋賀県高島市の農家「あっきー」のお米です。育てる人がわかっている、顔の見える素材から酵母を起こす。それが、えぷりーずの発酵の出発点です。

自家製酵母は、市販のイーストみたいに「短時間でぐんと膨らませる」ことはできません。酵母がゆっくりと生地の中で働き、小麦のタンパク質や糖質を少しずつ分解しながら、香りと旨みを引き出していく。その時間は長くかかってしまいます。

急いで作ればもっとたくさんパンが焼けます。でも、それはえぷりーずの食べたいパンじゃないんです。

グルテンを「悪者」にして遠ざけるのではなく、「どういう状態で食べるか」を考えること。発酵という自然のプロセスを大切にすること。それが、えぷりーずのパン作りの根っこにあるものです。

まとめ——グルテンを知ったうえで、自分の食を選んでほしい

  • グルテンは小麦タンパクが水と結びついてできるもの。化学物質でも添加物でもない。
  • 麩、うどん、醤油……日本人はずっとグルテンと共に生きてきた。
  • セリアック病などの診断がある場合を除き、グルテンフリーの健康効果は科学的に証明されていない。
  • 同じグルテンでも、2時間発酵と16時間発酵では、消化のしやすさがまったく違う。
  • 長時間発酵によってグルテンはプロテアーゼで分解され、体への負担がぐっと減る。

「グルテンフリー」を選ぶ自由は、もちろんあります。でもその前に一度、グルテンの正体と、パンの作り方に目を向けてみてください。知ることで、食の選択はもっと豊かになると思っています。

🍞 えぷりーずのパンについて
自家製玄米酵母で長時間発酵させたパンを、京都宇治からお届けしています。
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🐾 えぷるの犬用クッキーについて
同じ自家製玄米酵母を使った犬用クッキーも作っています。グルテンフリーのものと、小麦を使ったものと、両方ご用意しています。
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