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持ち上げるとみなさん驚かれます
栗あんぱんをトングで持ち上げたお客さまが、よく「え!? 重いっ!」と声を出されます。パンは軽いものだと思って手に取るので、トングに伝わる重さが思っていたのと違うんです。中に小豆あんがたっぷり入っていて、その上に大粒の渋皮煮が丸ごと一つのっているので、見た目よりずっと重くなります。

外側が鬼皮で内側が渋皮
栗には皮が2枚あります。外側の硬くてつやのある茶色い皮が鬼皮で、その内側にある薄くてざらざらした皮が渋皮です。
甘露煮は渋皮まで取ってつるんとした黄色い栗にしますが、渋皮煮はその名のとおり渋皮を残したまま煮ます。残すか取るかで、作業も見た目も味わいもまるで変わってきます。
鬼皮だけをむくのが難しい
渋皮煮を作るときにいちばん時間がかかるのが、この鬼皮をむく作業です。
思っているより難しくて、刃を入れると渋皮まで一緒に持っていかれてしまいます。渋皮に傷が入ると煮ている間にそこから崩れていくので、一粒ずつ、渋皮を破らないように鬼皮だけを外していきます。
いちばんしんどいのはむく前の時間
5キロは目の前にすると億劫になる量です。大きなボールに山盛りになった栗を見ると、思わず「やっぱり明日にしようかな」と尻込みしてしまいます。これが毎年のことです。
ところが不思議なもので、むき始めると思いのほかすいすい進みます。半日くらいはかかるのですが、無心でむいているので時間が経つのは意外と速くて、気がつくとボールが空になっています。
結局いちばん気持ちがしんどいのは、むく前の栗を眺めている時間です。
毎年終わるとそう思うのに、次の年もまた最初に億劫さが出て尻込みします。いい加減覚えろよと自分でも思うのに、何年も同じことを繰り返しています。
そして最初が億劫だった分、むき終わって艶々の渋皮煮になったときはものすごく気持ちが上がります。やり切ったという思いと絶対に喜んでもらえるぞという期待が一度に来るので、最初がつらい分だけ反動が大きいのかもしれません。
何度も煮こぼして渋みを湯に逃がす
渋皮を残すということは、渋みも一緒に残るということです。
栗の渋皮の渋みはタンニンというもので、濃いお茶や渋柿の渋みと同じ仲間です。タンニンは口の中のタンパク質にくっつく性質があって、くっつかれたところは引きつれます。舌がきゅっとする、あの感じが渋みの正体です。
だから渋皮煮は何度も煮こぼします。タンニンを湯のほうへ逃がすためで、何回やるかは栗によって違うので煮汁の色を見ながら決めています。ここを急ぐと渋さが残りますし、やりすぎると栗の味まで一緒に出ていってしまうので、色を見ながらやめどきを探します。

栗は滋賀県高島市から
栗は滋賀県高島市の山のしずく農園さん(@yamanoshizuku_nouen)から買わせてもらっています。農家の友人で、野菜もよく使わせてもらっています。
いつも5〜7キロお願いしていますが、去年は2キロでした。栗は自然のもので実る量が年によって変わるので、そういう年もあります。2キロだとあっというまで、焼ける日もその分だけ短くなりました。
あんも自分のところで炊いています
小豆あんも自家製です。買ってきたあんを使えば楽なのですが、甘さも炊き加減も自分で決めたいので小豆から炊いています。
その小豆あんをたっぷり包んで、上に大粒の渋皮煮を丸ごと一粒のせます。栗を半分に切れば数は倍に増えますし、あんを減らせば軽くて扱いやすいパンになります。それでも丸ごと一粒のせているのは、栗が丸ごと一つ見えてほしいからです。
あの重さは、そこから来ています。

手に入った栗が無くなったら終わりです
栗あんぱんは、その年に手に入った栗が無くなったら終わりです。だから何日出せるかは毎年ちがいます。
生地は玄米酵母で起こした自家製酵母で、一年のうちこの季節だけ、この生地に栗が入ります。
むいた鬼皮はまだ役目が終わっていません
半日かけてむいた鬼皮は、まだ役目が終わっていません。栗は捨てるところがないと思っています。
今日も栗を炊いています。
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