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同じ全粒粉パンでも中身はずいぶん違います
「全粒粉パンありますか」と聞かれることがあります。ただ、ひとくちに全粒粉パンといっても中身はずいぶん違っていて、全粒粉が数%だけのものから全部が全粒粉のものまで、どれも同じ名前で呼ばれています。
小麦をまるごと挽いた粉です
「全粒粉ってどういう粉ですか」とよく聞かれるので、小麦をまるごと挽いた粉ですとお答えしています。
ふつうの小麦粉は、小麦の外側の皮と芽を取り除いて中の白い部分だけを挽いたものです。全粒粉はそこを分けずに、ふすまと呼ばれる外側の皮も芽も一緒に挽きます。

それでもピンとこないという顔をされたときは、お米でいうと玄米のようなものですとお伝えします。小麦のふすまは米のぬかにあたり、胚芽はどちらも胚芽、残った白い部分が白米にあたります。白い小麦粉は、玄米を白米にするのと同じことをしてできあがります。
茶色いのはふすまの色で、香りが強いのもふすまがあるからです。
取り除いている部分に栄養が入っています
白い粉にするときに取り除いているのは、ちょうど栄養の多いところです。
| 100gあたり | 全粒粉 | 強力粉 |
| 食物繊維 | 11.2g | 2.7g |
| ビタミンB1 | 0.34mg | 0.09mg |
| 鉄 | 3.1mg | 0.9mg |
| マグネシウム | 140mg | 23mg |
食物繊維で4倍、マグネシウムは6倍あります。玄米と白米で言われていることが、小麦でもそのまま当てはまります。玄米のことは「玄米は体に悪い」って本当?という記事に書きました。
日本には何%という決まりがありません
ここからが面白いところです。日本には、全粒粉パンと名乗るための配合の決まりがありません。何%入っていればそう呼べるという基準が無いので、数%でも全粒粉パンです。一般的には20%前後のものが多いと言われています。
海外には決まりがあります
ドイツでフォルコルンブロートと名乗るには、全粒の粉が90%以上なければいけません。アメリカでホールウィートブレッドと書くなら、使う粉は全粒粉だけで白い小麦粉を混ぜることが認められていません。イギリスも同じで、ホールミールと名乗るならパンに使う小麦粉が全部全粒でなければならないと決まっています。
見分け方は原材料の並び順です
決まりが無くても、見分ける方法はあります。
日本の食品表示は、使った量の多い順に書くことになっています。裏の原材料表示を見て、いちばん最初に「小麦全粒粉」とあれば全粒粉が主役のパンです。「小麦粉」が先に来ていれば、全粒粉はそれより少ない。
これはパンにかぎらず、どの食品にも使える見方です。
100%と混ぜたものは別のパンです
白い小麦に全粒粉を混ぜたパンも焼いていて、こちらはふっくらと軽い口あたりになります。
100%は風味が豊かで粉の味が濃いかわりに、ふっくらはしません。混ぜたほうはふっくらしますが、あの濃さは出ません。同じ全粒粉という名前で呼んでいるけど、別のパンだと思っています。
ふすまがグルテンの網を切ります
全粒粉100%のパンは、あまり見かけないかもしれません。
ふすまの粒は硬くて角があるので、生地の中にできるグルテンの網を切っていきます。網に穴が開くとガスが抜けるので、生地は大きくはふくらみません。ふすまは水もよく吸うので、水は多めにします。
お店を始めたころは、この食パンでずいぶん苦労しました。ふくらみが悪かったり酸味が出すぎたりして、同じものが焼けませんでした。全粒粉には小麦の外側がそのまま入っていて酵母の栄養になるものも酵素も多く、発酵が速く進んで酸が出やすいです。
今はしっかり捏ねることを意識していて、それで安定しました。捏ねが甘いとグルテンの網が弱いままなので、ふすまに破られてもっとふくらまなくなる。そういうことだと思っています。
ただ正直なところ、理屈で分かって直したというより、何度も繰り返すうちになんとなく掴んだ感じです。レシピも作り方も変えていないのに、焼いているうちにうまく焼けるようになる。パンにはそういうところがあります。
茶色いパンが好きな方へ
買っていかれるのは「茶色いパンが好きなんです」と言われる方や、ふわふわのパンが苦手な方、ライ麦パンみたいなパンが好きだと言われる方です。
全粒粉のパンを知っている方は、見て「全粒粉にしてはふくらんでるね」と言われます。白い食パンと同じつもりで見た方は「小さいね」と言われます。同じパンでも、何と比べるかで正反対になります。
白いパンが好きな方はふわっとした食感が好きで、茶色いパンが好きな方はしっかりした歯ごたえと濃い粉の風味が好きなのだと思います。

この食パンは北海道産の全粒粉だけで、玄米から起こした自家製酵母で焼いています。
今日も焼いています。
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参考 日本食品標準成分表/Bread and Flour Regulations(イギリス)/21 CFR 136.180(アメリカ)/ドイツのパンの指針(Leitsätze für Brot und Kleingebäck)


