長野へ行く前に郷土料理を調べていたら、出てくるのは乾物ばかりでした。
凍み豆腐に凍み大根、寒天、氷もち。どれも干したものか、凍らせて乾かしたものです。だから今回は乾物を買って帰ろうと決めて出かけました。
この記事の内容
買ってきたもの

氷もち、おぶっこ麺、寒天、高野豆腐、打豆、ひたし豆、かんぴょう、それにぼたんこしょうの味噌。

低温で乾かしたなめことえのき、ルバーブ、信州の唐辛子も買いました。
氷もちを初めて知りました
調べていて初めて知ったものです。餅を凍らせて乾かしたもので、こんなに軽くてフガフガしたものになるとは思ってもみませんでした。
甘くして食べることが多いそうです。戻して練って粘りを出してからあんこをのせたり、氷もちと砂糖をお椀に入れてお湯を注いだり。離乳食にもいいと書かれていました。
ランチ会ではデザートに出すつもりで、練ってあんこをのせようかと思っています。
打豆とひたし豆
この2つは前から知っていました。打豆は大豆を潰して乾かしたもので、戻す時間がずいぶん短くて済みます。ひたし豆は青大豆で、戻して茹でたあとは味つけをほとんどしなくても美味しい豆です。
前にエクオールの記事を書いてから、大豆をもっと食べたいと思うようになりました。乾物にしてあると、思い立った日に使えます。
寒天は茅野で生まれました
天然の角寒天は、茅野市玉川が発祥の地です。百七十年ほど続いていて、生産量は全国一、出荷額は全国の六割を占めています。
理由は冬の気候でした。平均気温が0℃を下回って、雪が少なく晴れる日が多い。凍らせて、溶かして、乾かす。この繰り返しにちょうどいいのだそうです。
長野では寒天を気軽に使っていました。味噌汁に入れる、デザートにする、溶かして固めたものを味噌につけて食べる。京都にいるとデザートの材料という顔しか見ませんが、あちらでは普通のおかずの顔をしています。

寒天は水溶性の食物繊維で腸の菌のエサになるという話は、エクオールの記事でも書きました。ただ、調べていてひとつ気になることも知りました。温暖化で冷え込む期間が短くなって、寒天を作れる日数が九十日から六十日まで減っているそうです。
長野は味噌の使い方がうまい
ぼたんこしょうの味噌を買ってきました。唐辛子味噌という感じで、ごはんにのせても調味料にしても使えます。調べていたらセロリ味噌というものもあるそうで、これは自分で作って、パンに合わせられないか試してみるつもりです。
かぼちゃの鉄と温泉の鉄

糸萱かぼちゃは諏訪の伝統野菜で、茅野市北山の糸萱地区で明治より前から作られてきました。米が大凶作の年に、人の命をつないだかぼちゃだそうです。
面白いのは土です。糸萱は武田信玄が鉄を掘っていた土地で、土に鉄分が多い。そのせいか、普通のかぼちゃより鉄分が二倍あるそうです。
そして泊まった明治温泉も、茅野市北山です。あの湯は鉄を含んでいました。
湯の鉄も、かぼちゃの鉄も、同じ山の鉄だったということになります。
宿の朝ごはんに全部のっていました

諏訪湖名産の公魚(わかさぎ)の佃煮、れんこんのきんぴら、山葵漬け、つぼ漬け、肉味噌、おからサラダ、凍み大根、凍み豆腐、蕗の煮物、自家製の豆腐、それに卵かけご飯。
乾物と発酵と味噌が、ひとつの膳にそろっていました。薄味で滋味深くて、本当に美味しかったです。
京都にも佃煮は多いので珍しくはないのですが、それが朝ごはんの魚として真ん中にある感覚は、私にはあまりありませんでした。焼き魚をわざわざ出さなくても、佃煮で十分に満足できる。そう思えたのは年齢のせいもあるでしょうし、乾物や発酵食品や保存食を見直すきっかけがこのところ続いていたせいも、あるかもしれません。
凍み大根を家でも作ってみます
その膳に出ていた凍み大根が、思うより美味しくてびっくりしました。
子供のころ、京都の山あいにいたおばちゃんの家でも作っていました。家の中に、輪切りにした大根が割り箸にさして干してあったのを覚えていて、あんなに分厚く切って干して本当に美味しいんだろうかと思っていました。
食べた記憶はないのですが、出ていたのに干した大根だと気づかずに食べていたのかもしれません。
切干大根は毎年作るのに、凍み大根は一度も作ったことがありませんでした。手間は切干大根ほどかからないので、今年は家で干してみます。このあたりで作るなら、もう少し薄く切ったほうがいいのかもしれませんね。
このおばちゃんのことはおばちゃんにもっと教わればよかったに書きました。
なぜ乾物なのか

温泉のほうのブログで、御射鹿池(みしゃかいけ)のことを書きました。観光地として知られていますが、あれは昭和八年に作られた農業用のため池です。
なぜ溜める必要があったのか。この地域の川が、強い酸性だったからです。奥蓼科には温泉の源泉がいくつもあって、その水が川に入っている。そのまま引くと稲が育たなかったそうです。
標高も千百メートルを超えています。冷害も多くて、三年に一度米が穫れればいいと言われていたと知りました。
だから溜めて、湧き水で薄めて、日に当てて温めてから田に入れた。
温泉が湧く土地だから、米が作れなかった。そういうことかと思いました。
米が頼りにならない土地では、ほかのもので冬を越すしかありません。でも大根も豆も、採れるのはほんの一時期です。だから保たせる方法が要りました。凍み豆腐も凍み大根も寒天も氷もちも、全部「凍らせて乾かす」です。寒さは困りごとだったはずですが、同時に道具でもありました。
この旅の温泉のことはもうひとつのブログに書いています。
米を作る人のこと
米が作れなかった土地のことを調べていて、いまのお米のことも考えました。
うちは家で食べる米も店で使う米も、間に入ってくださる方を通して、滋賀の農家さんから直接買っています。
今年は市場でお米の値が下がっています。その農家さんも気にしておられて、ただ同じだけ下げるのは難しいので申し訳ない、と伝えてこられました。
スーパーで値が下がっているのは、私も見て知っています。でも農家さんの現状も、作っておられる方の多くがご高齢だということも、やはり見て知っています。休みの日に田舎のほうへ車を走らせると、田んぼにおられるのはみなさんかなりのご高齢です。
頑張ってくださっていることに感謝でいっぱいになる一方で、何年か先にお米を作る方がいてくださるんだろうかと、不安にもなります。
だから申し訳ないと言われたとき、こうお伝えしました。
それよりも、一生私に美味しいお米を食べさせてもらえることを願っています。
農業を学んでいる若い方もいると聞きます。その人たちが、ここで続けていこうと思えるような先であってほしいと思います。買う側にいる私にできるのは、作ってくださる方から買い続けることくらいですが、それだけは続けようと思っています。
温泉水で鍋をしたら豆腐が溶けました
汲んできた温泉水で鍋をしてみました。火にかけると泡がぶわーっと湧いてきます。

酵母で鍋をするときと、そっくりでした。私はいつも五分の一ほどを酵母にして、残りを昆布だしにします。その鍋で見るのと同じ泡が出ました。
どちらも、水に溶けていた炭酸ガスが熱で出てくるからです。温泉水は地下で溶けたもので、酵母は発酵で出たもの。出どころは違っても、鍋の中で起きていることは同じでした。
そして、しばらく炊いていると豆腐が溶けてきました。

溶けたのは、温泉水がアルカリ性だったからです。豆腐はタンパク質が網のようにつながって固まったもので、アルカリの湯で煮るとその結合がほどけて溶け出します。溶けた豆腐がそのままスープになって、豆乳のようなコクが出ました。
酵母ではこうなりません。酵母の液には発酵でできた酸が入っていて、アルカリとは逆の方向に働くからです。豆腐はむしろ身が締まって、大豆の味が濃く残ります。
泡はそっくりなのに、豆腐への働きは正反対でした。
ランチ会で2つ並べます
酵母で炊いた湯豆腐と、温泉水と同じ働きをするもので炊いた湯豆腐。同じ豆腐が、締まるのと溶けるのに分かれます。片方は昆布だしを使い、もう片方はだしを入れません。溶けた豆腐そのものがスープになるからです。
長野で買ってきた乾物も、一緒に出します。打豆もひたし豆も寒天も、エクオールの記事を書いてから気になっていたものばかりで、今回それが揃いました。
鮒ずしとへしこも、いつものようにお出しします。楽しみにしてくださる方が多いので、ここは変えません。発酵食品をパンに合わせて食べていただくのも、いつもどおりです。

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