うちの人が卵を1日6個食べています

ときどき、同じ話を聞きます。

「うちの人が、急に何かにハマって困っている」

テレビやYouTubeで見たものを、そのまま家に持ち込んでくる。笑って流せる人はいいのですが、心配してしまう奥さんほど振り回されます。

うちも同じです。最近は卵です。

うちの人の一日

最近、たんぱく質たんぱく質とうるさくなりました。

YouTubeで「中年はたんぱく質が不足している」と見たそうです。そして「たんぱく質は卵でとるのがいい。卵は完全食だから」と。

朝はゆで卵。お弁当は肉多めの卵焼き。夜も肉は絶対に欲しい。あっさりした晩ごはんだった日は、夜食にゆで卵を3つ。

数えると、1日6個くらいになります。

ちなみに、野菜はよく食べます。だから足りないのは野菜ではなく、たんぱく質の向きのほうです。

まず言っていることは間違っていません

ここを先に書いておきます。

卵のたんぱく質は、本当に質がいいです。アミノ酸スコア100。必須アミノ酸9種類が理想的なバランスで入っていて、ほかの食品のたんぱく質の質を測るものさしとして使われるほどです。

それから「卵は1日1個まで」。これも今はありません。2015年に、厚生労働省の食事摂取基準からコレステロールの上限値が撤廃されています。

だから「卵はいい」という話自体は、間違いではありません。

でも入っていないものが2つあります

卵が完全栄養食品と呼ばれるのは、ビタミンCと食物繊維以外を、ほぼひととおり含んでいるからです。

裏を返すと、入っていないのはこの2つ。

  • ビタミンC
  • 食物繊維

わたしが気になるのは、後ろのほうです。

食物繊維がないということは

食物繊維は、腸の菌のエサです。

卵をいくら食べても、菌のごはんにはなりません。そして卵を6個食べれば、その分ほかのものが入らなくなります。

増やしているようで、減っているものがあります。

数日で変わるという話

2014年に、こういう研究が出ています。

完全に動物性だけの食事と、完全に植物性だけの食事を人に食べてもらって、腸の菌がどう動くかを見たものです。

動物性だけにすると、植物の食物繊維を分解する菌が減りました。

そしてこれが、数日で起きています。

食べないと減るのではありません。食べる比率が変わるだけで減ります。

減った菌のなかには、以前酪酸菌の記事で書いた菌も入っていました。

エクオールの話と同じでした

前に、エクオールという成分の連載を書きました。大豆のダイゼインという成分が、腸の菌の働きでエクオールに変わるという話です。作れる人と作れない人がいて、その差は菌にありました。

動物性に偏ると、ここで二重に損をします。

大豆を食べなければ、材料が来ません。
食物繊維が減れば、その菌が育ちません。

材料も来ないし、働く菌も減ります。

たんぱく質はメインの皿だけじゃない

たんぱく質と言うと、肉か魚か卵を思い浮かべます。うちの人もそうです。

でも、数字を並べるとこうなります。

  たんぱく質
卵 1個 6〜7g
納豆 1パック(40g) 約6.6g=卵1個とほぼ同じ
木綿豆腐 半丁(150g) 約10g=卵1.5個分
高野豆腐 1個(16g) 約8g=卵1個より多い

高野豆腐です。あんな小さいものひとつで、卵1個を超えます。

そして鰹節。削り節は100gあたり約77gがたんぱく質で、肉よりずっと濃い食品です。

正直に言うと、玉ねぎにかける1パック2.5gほどでは約2g。量としては多くありません。

でも、だからこそ言いたいのです。

足りないと思って卵を足す前に、もう一度食卓を見てほしい。味噌汁にも、冷奴にも、かけている鰹節にも、たんぱく質は入っています。

納豆・冷奴・厚揚げ・高野豆腐・ほうれん草のおひたしを盛り合わせた一皿

ごはんと味噌汁はよくできた組み合わせです

ごはん茶碗1杯(150g)にも、たんぱく質が約3.8g入っています。白米でもです。

お米はもともと6〜7%がたんぱく質。炊くと水を含んで薄まりますが、毎日2杯3杯と食べれば、けっこうな量になります。

そして、ここからが面白いところです。

白米のたんぱく質は、リジンというアミノ酸が少なめです。そこだけ見ると、卵や大豆に一歩譲ります。

その少ないリジンをたくさん持っているのが、大豆です。

ごはんと味噌汁。ごはんと納豆。ごはんと冷奴。

昔からの組み合わせは、足りないところを補い合う形になっています。誰かが栄養学で設計したわけではありません。長い時間のなかで、そうなりました。

いま、炭水化物はすっかり悪者です。

でもごはんを抜くということは、この組み合わせの片方を抜くということでもあります。

パンにも入っています

パンにもたんぱく質があります。白い食パンにもです。

  たんぱく質
食パン 100g 約9g
6枚切り1枚(60g) 約5g
ライ麦パン 100g 約8.4g
全粒粉パン 100g 約7.9g

6枚切り1枚で、卵1個に近い量です。

そして、そのたんぱく質の正体がグルテンです。

グルテンは、小麦のたんぱく質が水と結びついてできたもの。以前、連載に書きました。

お麩は、ほぼ純粋なグルテンでできています。焼き麩は100gあたり約28gがたんぱく質。肉に近い濃さです。日本人は昔から、お麩でたんぱく質を摂ってきました。

炭水化物を減らすと、実はたんぱく質も減ります。ごはんからも、パンからも。

半分だけ植物性にしてみませんか

大豆のアミノ酸スコアも100です。肉や卵と同じ。

そして大豆には、卵にないものがついてきます。食物繊維とイソフラボン。たんぱく質と、菌のエサが、同じ袋に入っています。

植物性たんぱく質は大豆だけではありません。

  • 豆腐・納豆・味噌・高野豆腐・湯葉・おから・豆乳・きな粉……大豆の仲間はこれだけあります
  • ひよこ豆・レンズ豆・えんどう豆……スープやサラダ、カレーなどに入れられます
  • ごま……すりごま大さじ1で約1.2g
  • アーモンドやくるみ……10粒ほどで約3g
  • そば……ゆで1玉で約8g
  • 全粒粉やライ麦のパン……ライ麦パン1切れ(50g)で約4.2g

動物性たんぱく質のわずか3%を植物性に置き換えただけで、死亡リスクが下がったという報告もあります。

そしてこれは、新しい健康法ではありません。昔の日本人の食べ方に戻るだけです。

心配していること

ここからは、うちの話です。

うちの人は脂に弱い人です。焼肉に行ってもホルモンは数個しか食べられません。ハラミばかり食べています。

脂の消化には胆汁と膵臓のリパーゼが要ります。たんぱく質の消化とは道すじが違うので、脂に弱いからたんぱく質にも弱い、というわけではありません。

でも、卵と肉はたんぱく質と脂が同じ袋に入っています。

卵1個で、たんぱく質6〜7gと脂質5g。6個なら、たんぱく質40gと脂質30g。

脂に弱い人が、いちばん脂とセットの形でたんぱく質を摂っています。

筋トレとお酒と痛風

痛風で薬を飲んでいます。

きっかけは、たぶん筋トレでした。

20代のころ、筋トレにはまりました。お酒が好きです。その飲み方のまま、筋トレを始めました。

帰ってきて筋トレをして、お風呂に入って、ごはんとお酒。その生活のあとに、一気に痛風が出ました。それ以来ずっと、薬が手放せません。

あとから調べて、理由がわかりました。

激しい筋トレのような無酸素運動は、乳酸を大量に作ります。乳酸は腎臓で尿酸の排泄と席を取り合います。汗で脱水すれば、さらに出にくくなります。

ふだんは乳酸がそれほど多くないので、この取り合いはあまり起きません。増えるのは、激しい運動をしたときと、お酒を飲んだときです。

もうひとつあります。

体を動かすときには、エネルギーのもとになる物質を使っています。ATPと呼ばれるものです。筋肉も内臓も、何かをするたびにこれを使います。

使ったあとのATPは、いらないかけらになって体に残ります。そのかけらが、最後に尿酸になります。

つまり激しく動くほど、使う量が増えて、出てくる尿酸も増えます。

ガイドラインでは、尿酸値の高い人には有酸素運動を勧め、激しい無酸素運動は避けるようにとされています。

そこにお酒が重なりました。筋トレ、お風呂、お酒。三つとも同じ方向を向いていました。

ビールをやめて焼酎にすれば大丈夫か

ビールを減らして焼酎にすることが痛風対策か。

半分は当たっています。ビールにはプリン体がありますが、焼酎やウイスキーのような蒸留酒には、ほとんど入っていません。

でも、残りの半分が抜けています。

プリン体がゼロでも、アルコールそのものが尿酸値を上げます。

  • アルコールを分解するときにも、さきほどのATPが使われます。そのかけらが、また尿酸になります
  • 筋トレのときは筋肉が乳酸を作りましたが、お酒のときは肝臓のほうで乳酸が増えます。たまった乳酸が尿酸の排泄と席を取り合います
  • お酒には利尿作用があるので、体の水が減って尿酸が濃くなる

筋トレのときと、まったく同じ3つです。

高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)では、尿酸値に影響を与えない1日の量をこう示しています。

  1日の目安
ビール 500ml以下
日本酒 1合以下
ウイスキー 60ml以下
焼酎(25度) 100ml以下

焼酎100mlは、グラスに注げば半分くらい。ロックなら1杯です。水やお湯で割っても、焼酎の量は変わりません。

種類を変えても、量が減らなければあまり意味がありません。

次に来そうなのは糖質制限です

これは、痛風のある人にはいちばんまずい組み合わせです。

糖質を減らすと、体は脂肪を燃やしてケトン体を作ります。このケトン体も、尿酸の排泄を妨げます。日本の学会誌に「糖質制限により血清尿酸値が上昇した一例」という報告もあります。

そのうえ、ごはんを減らすとおかずが増えます。肉が増えれば、プリン体も増えます。

それに、さきほど書いたようにごはんにもたんぱく質は入っています。減らせば、そのぶんも減ります。

低炭水化物の食事は痛風のリスクを上げるという研究があります。ただし、たんぱく質と脂質を植物性からとった場合には、そのリスクが抑えられていました。

ここでも、植物性でした。

それから家族の食卓のこと

最後にひとつだけ。

ひとりで卵を6個食べると、その日の夕食に卵が使えません。

作る側からすると、これがいちばん困ります。誰かの健康法のために、ほかの人が我慢するのか。それとも、その人だけ別の食事を作るのか。

健康にいいとされることでも、家の中で無理が出るなら、それは続きません。

続けられる形にしておくこと

腸の菌は、一度にたくさん食べて決まるものではありません。続けた結果のほうです。

だとしたら大事なのは、強いものを一回食べることではなく、続けられる形にしておくこと。

卵を6個は、続けられる形ではないと思います。

半分だけ、植物性にしてみませんか。味噌汁と、冷奴と、納豆。それに、野菜かぬか漬けが一品。

たんぱく質も、菌のエサも、これで両方そろいます。

ごはんと味噌汁を中心にした和の食卓

※ ここに書いたのは一般的な話です。持病のある方は、かかりつけのお医者さんの言うことが一番です。

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今日もパンを焼いています。

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